
キックとベースをEQしても、ローが濁ったままになっていませんか?
原因は、音量だけでなく「どちらを主役にするか」と「どの周波数でぶつかっているか」が曖昧になってることにあります。
この記事を読むことで、リファレンス曲の聴き方、主役の決め方、マスキングの見つけ方をステップ方式で解決できて、ローエンドを整理する判断基準が作れるようになります。
まずは、キックとベースのどちらを前に出したいのかを決めるところから始めましょう。
1:まずゴールを決める「どちらを主役にするか?」
目的・概要・ゴール
- 目的:曲のローエンドで「キックとベースのどちらを主役にするか」を決め、後のEQやコンプの判断基準を作る。
- 概要:実際に音を鳴らしながら、「曲のキャラ」「ジャンル」「リファレンス」を手がかりに、ローエンドの主役をキックかベースか(あるいは帯域ごと)で決める。
- ゴール:
- 「この曲はキックを一番下に置く」「この曲はベースのサブを主役にする」など、自分の言葉で言語化できている状態。
手順
- 曲全体のイメージとリファレンスを確認し、「ローの土台=誰か?」を決める。
- キックとベースだけを聴き比べ、「どちらを前に出したいか」を判断する。
- 必要なら「サブはキック/ロー〜ローミッドはベース」のように帯域ごとの役割も決める。
ステップバイステップ
- リファレンス曲を1〜2曲決める
- 自分の作りたいジャンルの商業曲をDAWにインポートする。
- それとは別に、自分の現行曲プロジェクトも開いておく。
- リファレンスのローエンドを集中して聴く
- 自分の曲でも同じようにローパスして聴く
- キックとベースの印象を書き出す
- 「キックが細い/強い」「ベースが目立ちすぎる/埋もれている」など、感じたことを箇条書きにする。
- 主役を決める
- ハウス/テクノなど、多くのダンス系では「サブ〜一番下はキックを主役にする」例が多い。
- 自分の曲も、
- 「サブ〜超ローはキックが主役」
- 「その上のロー〜ローミッドはベースが主役」
と決めてメモに書く。
達成状態
- 「ここでは、サブはキック、ロー〜ローミッドはベース」というように、ローエンドの役割を一文で説明できる。
- リファレンスと自分の曲をローパスで聞き比べたとき、「どちらを主役にしたいか」が自分の耳で明確になっている。
異常時の対応
- 「どっちを主役にすべきか全然決められない」
- 「リファレンスと自分の曲の差が大きすぎて混乱する」
- 対処:今は“完成形”とのギャップを気にしすぎない。
- この章の目的は「主役を決めること」であり、「今すぐ同じ音にすること」ではないので、ざっくりでよい。
2:ローエンドとマスキングを理解する
目的・概要・ゴール
- 目的:何を「マスキング」と呼ぶのか、ローエンドの帯域感覚(20〜200Hz)を耳とアナライザーでつかむ。
- 概要:キック+ベースを聴きながら、「どこで音同士がぶつかっているか」を音と表示の両方で確認する。
- ゴール:
- 「この曲は○○Hzあたりでキックとベースがぶつかって濁っている」と自分で指摘できる状態。
手順
- ローエンドの帯域をローパス/ソロで聞き取る。
- 「濁りが聞こえる瞬間」と「アナライザー上でのピーク」を対応させて覚える。
- マスキング=「同じ帯域で2つが強く出ている状態」と理解する。
ステップバイステップ
- ローエンドだけを聞けるようにする
- 濁りが出ている場所を耳で探す
- キックとベースを同時にループ再生し、「モワッとする」「輪郭がボヤける」瞬間を探す。
- 濁りを感じたところで一度再生を止め、その場所にマーカーを打つ。
- アナライザーでその瞬間の周波数を確認する
- 「マスキングされている帯域」としてメモする
- 例:「1サビのキックとベースは120Hz付近でぶつかっている。」
- 必要に応じて、複数のポイント(例:80Hz / 120Hz / 200Hz)をメモしておく。
達成状態
- 具体的に「○○秒〜○○秒の間で、キックとベースが××Hzあたりで濁っている」と言える。
- 「マスキング=同じ周波数レンジを同時に強く主張している状態」と自分の言葉で説明できる。
異常時の対応
- 「どこが濁っているのかよく分からない」
- 対処:音量バランスを一時的に上げて確認する。
- ベースの音量を一時的に+3〜6dBほど上げ、意図的に「やりすぎ」にしてから濁りを探すと、どこがぶつかっているか分かりやすい。
- 対処:音量バランスを一時的に上げて確認する。
- 「アナライザーを見てもよく分からない」
- 対処:1バンドをブーストしてスイープしながら濁りを探す。
- 濁りそうな帯域(80〜200Hz)付近で少しブーストし、より濁るポイント=マスキングされている帯域と考える。
- 対処:1バンドをブーストしてスイープしながら濁りを探す。
よくある質問
- Qそもそも「主役を決める」って何を決めることですか?
- A
キックとベースのどちらを低域の中心にするかを決めることです。
- Qキックを主役にするか、ベースを主役にするかはどう判断すればいいですか?
- A
ジャンルとリファレンス曲のローエンドの聴こえ方を基準に判断します。
- Qローパスフィルターでローエンドだけを聴くのはなぜですか?
- A
余計な高域を減らして、キックとベースのぶつかり方を聴き取りやすくするためです。
- Q「マスキング」って具体的には何が起きている状態ですか?
- A
キックとベースが同じ帯域を強く出して、お互いの輪郭を見えにくくしている状態です。
- Qアナライザーを見ても、どこがぶつかっているのか分かりません。どうすればいいですか?
- A
濁りを感じる部分を耳で先に探し、その瞬間の周波数をアナライザーで確認します。
- Qキックとベースのどちらをカットすればいいですか?
- A
まず「どちらを主役にするか」を決めて、主役ではない側を少し削る考え方です。
- Qリファレンス曲と自分の曲の差が大きすぎるときは、どう考えればいいですか?
- A
いきなり同じ音にする必要はなく、まずは役割の整理から始めます。
- Qキックとベースのどちらも埋もれて聞こえるのはなぜですか?
- A
同じ帯域でぶつかっていて、マスキングが起きている可能性が高いです。
- Qハウスやテクノでは、なぜキックを主役にしやすいのですか?
- A
クラブ系ではキックの存在感が土台になりやすいからです。
- Qこの章を終えると、何ができるようになりますか?
- A
一番肝になるローエンドの役割を言葉で説明できて、どの帯域でぶつかっているかを自分で見つけやすくなります。つまり、言語化できないことを実践することは難しいということです。
まとめ
キックとベースのローエンド整理は、「どちらを主役にするか」を決め、「どこでぶつかっているか」を見つけるだけで、かなり見通しが良くなります。
EQは“とりあえず削る道具”ではなく、役割分担をはっきりさせるための道具です。
まずは主役を決め、マスキングしている帯域を見つけるところまでできれば、ローが濁って聴こえる原因の大半には対応できます。
次のステップでは、見つけたぶつかりやすい帯域を実際にEQで整理して、キックとベースが同時に鳴っても輪郭が崩れない状態を目指しましょう。

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