【完全保存版】ディエッサーの使い方徹底ガイド

コンプレッサー編 1 ・ダイナミクス

ボーカルや楽器の録音において、「サ行」「シャ行」などの歯擦音(シビランス)が耳障りに聞こえる問題は避けて通れません。これらを効果的に抑制するのがディエッサーです。

本記事では、ディエッサーの動作原理、代表的なプラグイン、得意分野と不得意分野、実践的な操作方法から具体的な設定例まで、忖度なしの事実ベースで専門的に掘り下げていきます。

1. ディエッサーの特徴

ディエッサーは、本質的には「周波数選択型のコンプレッサー」です。通常のコンプレッサーが全周波数帯域を処理するのに対し、ディエッサーは特定の高周波帯域(通常5kHz〜12kHz)にのみコンプレッションを適用します。

1-1. ディエッサーの動作原理

ディエッサーは2つの主要な回路で構成されています。

ディテクター(サイドチェイン)回路: 特定の周波数帯域を検知するフィルターを備えています。このフィルターでシビランス成分を検知し、そのレベルがスレッショルドを超えた場合にのみゲインリダクション(音量抑制)が作動します。多くのプラグインでは、この検知している周波数だけを聴く「Listen」や「Audition」モードが搭載されており、正確な周波数設定を可能にします。

ゲインリダクション回路: 検知されたシビランスを抑制します。この抑制方法には大きく分けて2つのタイプが存在します。

1-2. ワイドバンドとスプリットバンドの本質的な違い

ディエッサーの処理方式には、音響的に異なる2つのアプローチがあります。

ワイドバンド・ディエッシング(Wideband De-essing): シビランスを検知すると、オーディオ信号全体のレベルを下げます。これは手動でシビランス部分のクリップゲインを下げる操作に似ており、より自然な結果をもたらすことがあります。しかし、シビランス以外の音も一緒に抑制されるため、音色の変化が大きくなる可能性もあります。

スプリットバンド・ディエッシング(Split-band De-essing): 設定された周波数帯域(クロスオーバー周波数以上)のみを分割し、その帯域だけを圧縮します。これにより、他の帯域への影響を最小限に抑え、ターゲットとなるシビランスだけをピンポイントで処理できます。ただし、不自然な「リスプ(舌足らずな音)」になりやすいというデメリットもあります。

この違いから、ワイドバンドは「より自然なボーカル処理」に向き、スプリットバンドは「より精密な周波数コントロール」に向くと整理できます。

1-3. 基本パラメータと動作挙動

どのディエッサーでもほぼ共通して存在する主要なパラメータです。

Frequency(周波数): ディエッサーが検知する中心周波数です。男性ボーカルでは5-7kHz、女性ボーカルでは7-9kHzあたりが一般的ですが、録音環境やマイクによって大きく異なります。Listen/Auditionモードを使い、「シュー」「シー」というノイズが最も大きく聴こえるポイントを探すのが基本です。

Threshold(スレッショルド): ディエッサーが動作を開始する音量レベルの基準値です。これより信号レベルが大きいと減衰が始まります。スレッショルドをゆっくり下げていき、ゲインリダクション(GR)メーターが問題のシビランスの時だけ振れるように設定します。

Range / Reduction(レンジ/リダクション量): どのくらい音量を抑制するかを決定します。通常-3dBから-8dB程度で設定されます。この数値が大きすぎると、「シ」が「フィ」のように聞こえる「リスプ」という不自然な音になります。最も音の自然さを左右するパラメータです。

Attack(アタックタイム): シビランスが発生してから、どのくらいの速さでゲインリダクションを開始するかです。遅いとシビランスの頭の鋭い部分(トランジェント)が抑制されずに残ってしまい、「チッ」という耳障りな音が残ります。まずは速い設定(0.1-1ms程度)から始めるのが定石です。

Release(リリースタイム): シビランスが終わってから、どのくらいの速さでゲインリダクションをやめるかです。リリースが速すぎると、シビランスの直後の音が不自然に持ち上がって聞こえる「ポンピング」が発生することがあります。通常40-60ms程度から始め、次の音節に影響を与えない最もスムーズに聞こえる値を探します。

Q / Bandwidth(Q幅/バンド幅): 処理する周波数の範囲の広さを決定します。狭いQは特定の周波数だけをピンポイントで処理し、広いQはより広範な帯域に作用します。シビランスの問題が狭い範囲に集中している場合は狭めに、複数の周波数に渡る場合は広めに設定します。


2. 代表的なプラグイン

業界で評価の高い代表的なプラグインを、そのキャラクターと得意分野に分けて整理します。

2-1. 汎用・多機能系

FabFilter Pro-DS

FabFilter Pro DS

高い透明性と多機能性を兼ね備えた定番プラグイン。ワイドバンド/スプリットバンド両対応、Mid-Side処理、最大5msのLookahead機能、詳細なリアルタイム表示など、あらゆるニーズに応える高機能性が特徴です。
非常に柔軟な設定が可能で、内部のアルゴリズムが高度なため、大まかな周波数を設定するだけでうまく機能することが多いです。
ボーカルから楽器、マスタリングまで幅広く対応します。

Waves Renaissance DeEsser

Waves Renaissance DeEsser

Waves Sibilance

Waves Sibilance

Renaissanceはシンプルで直感的な操作性が特徴の定番ディエッサー。
Sibilanceはより新しい「Organic ReSynthesis」技術を使用し、シビランス成分を分析して再合成することで、自然な結果を素早く得られることを目的としています。
価格帯が手頃で、初心者から上級者まで幅広く使われています。

2-2. ハイエンド・マスタリング系

Weiss Deess / DS1-MK3(Softube)

Weiss Deess DS1 MK3(Softube)

マスタリンググレードの高品質なディエッサー。オリジナルのハードウェアのアルゴリズムを忠実に再現しています。
2つの独立したバンドを持ち、非常に精密な処理が可能です。
極めて透明で音楽的なサウンドが特徴で、マスタリング段階での微細な調整に適しています。

Eiosis E2Deesser

Eiosis E2Deesser

シンプルな操作と詳細なダイナミックEQセクションを両立したプラグイン。
Time-Frequencyディスプレイで視覚的にシビランスを確認でき、正確な周波数特定が可能です。
Mid-Side処理やマルチバンド機能など、高度な処理にも対応します。

2-3. 特殊用途系

Oeksound Soothe2

Oeksound Soothe2

厳密にはディエッサーではなく「ダイナミック・レゾナンス・サプレッサー」です。
シビランスだけでなく、あらゆる周波数帯域の耳障りなピーク(レゾナンス)を自動で検知し、非常に透明に抑制できます。
ディエッサーで処理しきれない複雑なハーシュネス(耳障りさ)がある場合に特に有効です。高域にターゲットを絞って適用すれば、非常に透明で効果的なディエッサーとして機能します。

Techivation T-De-Esser 2

Techivation T DeEsser

AI技術を活用し、シンプルな操作で効果的なディエッシングを実現することを目指したプラグイン。
自動検知機能により、最小限のパラメータ調整で結果を得られるよう設計されています。
初心者や時間制約のある作業に適しています。


3. 得意なこと,不得意なこと

ディエッサーの機能を正確に理解するため、得意とする処理と不得意とする処理を整理します。

3-1. 得意なこと

シビランスのピンポイント抑制: ボーカルの「サ行」「タ行」や、シンバルの耳障りな高域など、特定の周波数に起因する突発的なピークを自然に抑えます。EQのように常にその帯域をカットするのではなく、問題が発生した瞬間だけゲインを下げるため、音源の明るさや空気感を損ないにくいのが最大の利点です。

トランジェントのダイナミックコントロール: シンバルやハイハットの過剰なアタック感を、音色を変えずにダイナミクスで和らげます。特にドラムオーバーヘッドマイクにおいて、アタックを潰さずサステインの「シャーン」という部分だけを抑えることが可能です。

エフェクトセンドの最適化: ボーカルのシビランス成分がリバーブやディレイに送られると、そのエフェクト音の中で「シュー」という音が強調され、非常に耳障りになります。リバーブやディレイの前にディエッサーをインサートすることで、エフェクトに送られる信号からシビランスを取り除き、スムーズで心地よい空間表現が可能になります。

3-2. ディエッサーが不得意なこと

全体的な周波数バランスの補正: ディエッサーはEQではありません。高域が全体的に多すぎる場合、あるいは特定の周波数が常に響いている場合、それはEQで処理すべき問題です。ディエッサーはあくまで「時々飛び出してくる音」を処理するツールであり、静的な周波数バランスの調整には適していません。

完璧な無音化や根本的なノイズ除去: ディエッサーはレベル差に基づいて動作するため、演奏されている音と同時に鳴っているノイズ(例:録音中のエアコンノイズ)を完全に除去することはできません。このようなケースでは、スペクトラルリペアツール(iZotope RX等)が適しています。

複雑な共振やマルチバンドのハーシュネス: 複数の帯域に渡って共振やハーシュネス(耳障りな音)がある場合、複数のディエッサーを使うより、ダイナミックEQやOeksound Soothe2のようなツールの方が効率的な場合があります。ディエッサーは基本的に単一の周波数帯域に特化したツールです。

3-3. ディエッサー vs. ダイナミックEQ vs. マルチバンドコンプレッサー

これら3つのツールは機能的に近いため、混同されやすいですが、それぞれ異なる目的に最適化されています。

ディエッサー: シビランス抑制に特化しており、特定の狭い高周波帯域に最適化されたアタック/リリースタイムを持ちます。操作が迅速で、音楽的な結果を得やすい設計になっています。

ダイナミックEQ: より外科的(Surgical)な周波数コントロールに向いています。特定の周波数ピンポイントでブースト/カットを動的に行うことができ、シビランスだけでなく、ルームモードの抑制やボーカルの特定の共振除去などにも使えます。

マルチバンドコンプレッサー: より広範な帯域(例:低域、中域、高域)全体のダイナミクスをコントロールするのに使います。ただし、高域バンドだけを使えばワイドバンドのディエッサーとして代用可能です。

4. 実践的な操作手順と変化の聴き方

ここでは、汎用的なディエッサーを例に、基本的な操作手順と聴くべきポイントを整理します。

4-1. セットアップの流れ

問題箇所のループ再生: ボーカルの「サシスセソ」やシンバルの強打など、最も耳障りに感じる部分をループ再生します。この段階では、問題を明確に認識することが重要です。

Listen(Audition)モードの活用: ディエッサーのListen(またはAudition/Solo)モードを有効にします。これにより、ディエッサーが検知している周波数帯域だけを聴くことができます。

周波数の特定: Listenモードのまま、周波数ノブをスイープ(動かす)します。ボーカルの場合、男性なら5-6kHz、女性なら7-8kHzあたりが一般的ですが、録音環境やマイクによって大きく異なります。「シュー」「シー」というノイズが最も大きく聴こえるポイントがターゲットです。ギターの弦のきしみ(フレットノイズ)なら2-5kHz、シンバルの金切り声のような響きは9-14kHzあたりにあることが多いです。

スレッショルドの設定: Listenモードを解除します。スレッショルドをゆっくり下げていき、ゲインリダクション(GR)メーターが問題のシビランスの時だけ振れるように設定します。常にGRが作動している状態は、スレッショルドが低すぎます。

レンジ(Range)またはリダクション量の設定: どのくらい音量を抑制するかを決めます。-3dBから-6dB程度が一般的なスタート地点です。A/B比較(バイパスしてオン/オフを切り替える)をしながら、シビランスが十分に抑制され、かつ不自然な「リスプ」にならない点を探ります。

アタックとリリースの調整: アタックは速め(0.1-1ms程度)から始め、音が硬すぎる場合に少しだけ遅くします。リリースは40-60ms程度から始め、シビランスの直後の音が不自然に持ち上がらない(ポンピングしない)、最もスムーズに聞こえる値を探します。

4-2. 聴き取りのポイント

周波数の聴き方: Listenモードでスイープ中、「s」の音だけでなく「sh(シュ)」や「t」の破裂音まで検知していないか確認します。ターゲットはあくまで「s」の核となる最も鋭い部分です。間違った帯域を選ぶと、言葉の明瞭度(clarity)自体を損ないます。

スレッショルドの聴き方: GRメーターだけでなく、耳で判断します。スレッショルドを下げすぎると、シビランス以外の静かな部分(息継ぎや母音の倍音)までコンプレッションがかかり、ボーカル全体の質感が暗く、こもった(dull)印象になります。ボーカルが「息苦しそう」に聞こえたら下げすぎのサインです。

レンジ/リダクション量の聴き方: これが「リスプ」の直接的な原因です。レンジを深くするほど「s」の音が失われます。A/B比較を頻繁に行い、「s」が完全に消えるのではなく、ミックスの中で他の音と馴染むレベルに「押し込められている」状態を目指します。「s」が「th(英語のthの発音)」や「f」に聞こえ始めたら、それはやりすぎです。ソロで聴くと少し気になるくらいでも、ミックス全体で聴くとちょうど良いことも多いです。

全体のバランス: ソロで完璧に設定しても、ミックス全体で聴くと不自然に浮いてしまうことがあります。必ずアンサンブルの中で処理前後の音を比較し、意図した効果が得られているかを確認してください。


5. ソース別・実践的な設定例(10選)

以下はあくまで出発点です。最終的には必ずご自身の耳で判断してください。

用途
ターゲット周波数
リダクション量
モード
設定ヒント
男性ボーカル(シビランス)
5kHz – 7kHz
-4dB ~ -8dB
ワイドバンド
声質によっては4kHzあたりに強い成分があることも。リスプになりにくいワイドバンドから試すのがお勧め。
女性ボーカル(シビランス)
7kHz – 9kHz
-3dB ~ -7dB
スプリット/ワイド
男性より周波数が高め。高域の「空気感」を損なわないよう、リダクションは慎重に。
バックボーカル(バス)
6kHz – 8kHz
-2dB ~ -5dB
スプリットバンド
リードボーカルを邪魔しないよう、少し強めに抑えても良い。バス全体にかけることで一体感も出る。
ドラムオーバーヘッド(シンバル)
9kHz – 14kHz
-4dB ~ -10dB
スプリットバンド
アタックを潰さず、サステインの「シャーン」という部分だけを抑えるのがコツ。速いアタックが必要。
ハイハット(耳障りな高域)
8kHz – 12kHz
-3dB ~ -6dB
スプリットバンド
特に打ち込みのハイハットで金属的な響きが強い場合に有効。EQでカットするよりダイナミックに処理できる。
アコースティックギター(弦のきしみ)
2kHz – 5kHz
-5dB ~ -12dB
スプリットバンド
「キュッ」というフレットノイズにターゲットを絞る。周波数が低めなので、ギターの倍音を削りすぎないようQは狭めに。
歪んだエレキギター(Fizzノイズ)
4kHz – 8kHz
-2dB ~ -6dB
スプリットバンド
アンプシミュレーターなどで発生しがちな「ジー」という耳障りな高周波ノイズを抑制。ピッキングのアタック感を消さないように注意。
スネアドラム(ハイハット被り)
8kHz – 10kHz
-3dB ~ -8dB
スプリットバンド
スネアのマイクが拾ってしまったハイハットの音を、スネアのアタックに影響を与えずに抑制する。
リバーブ/ディレイ(Send)
5kHz – 10kHz
-4dB ~ -10dB
スプリットバンド
エフェクトに送る信号(Send)にインサート。ボーカルのシビランスがリバーブで拡散するのを防ぐ。
マスターバス(全体の調整)
8kHz – 12kHz
-1dB ~ -2dB
スプリットバンド
ミックス全体で僅かに耳につく高域を滑らかにする最終手段。非常に浅くかけるのが鉄則。

6. お勧めしない使い方

EQの代用として使うこと: 高域が全体的に多すぎる、あるいは特定の周波数が常に響いている場合、それはEQで処理すべき問題です。ディエッサーはあくまで「時々飛び出してくる音」を処理するツールです。静的な周波数バランスの調整には適していません。

スレッショルドを下げすぎること: GRメーターが常に振れている状態は、シビランス以外の音まで抑制してしまい、音源の明瞭度や活気を奪います。ボーカルが「こもって」聞こえる最大の原因です。

レンジを深くかけすぎること: これが「リスプ」の最大の原因です。シビランスを完全に消すのではなく、ミックスに馴染むレベルまで抑えるのが目的です。ソロで聴いて完璧を目指すと、オケと混ざった時に不自然になります。

問題の根本原因を無視すること: そもそも録音段階でのマイクの角度や距離、シンガーの歌い方でシビランスは軽減できます。また、安価なコンデンサーマイクの不自然な高域ピークが原因であることも多いです。ミキシング以前の問題にも目を向けましょう。

一つのディエッサーで全てを解決しようとすること: 複雑なシビランスを持つボーカルには、異なる周波数や設定を持つ2つのディエッサーを直列で使う方が、一つのディエッサーを深くかけるより自然な結果になることが多いです。

7. よくある質問

Q
ディエッサーはコンプレッサーやEQの前に置くべき?後に置くべき?
A:
A

一般的にはコンプレッサーの後、エフェクトの前に置くのが定石です。コンプレッサーは音量のダイナミックレンジを狭めるため、静かだったシビランスを増幅させることがあります。コンプレッサーでダイナミクスを整えた後に、最終的に問題となるシビランスをディエッサーで叩くのが最も効率的です。EQで高域をブーストした後にディエッサーを置く「ブースト&カット」テクニックも有効です。

Q
ディエッサーをかけても「リスプ」になってしまいます。どうすれば?
A:
A

主にレンジ(リダクション量)のかけすぎが原因です。まずレンジを浅くしてください。それでも改善しない場合、以下の点を試します。(1) ワイドバンドモードを試す。ワイドバンドは信号全体を下げるため、リスプになりにくいと言われます。 (2) 周波数設定を見直す。「s」の中心周波数から少し外れている可能性があります。 (3) 複数のディエッサーを直列で使い、それぞれで浅くかける(シリアル・ディエッシング)。

Q
ワイドバンドとスプリットバンド、どちらを選ぶべき?
A:
A

決まったルールはありませんが、ワイドバンドは処理が自然でリスプになりにくい傾向があり、ボーカルに適しているとされることがあります。一方、スプリットバンドは他の帯域への影響が少ないため、マスタリングや楽器の処理でピンポイントに問題を解決したい場合に有効です。まずは両方試し、より自然に聞こえる方を選びましょう。

Q
複数のディエッサーを使うのはアリ?
A:
A

はい、非常に有効なテクニックです。例えば、ボーカルチェーンの早い段階で軽く全体を抑えるディエッサーを置き、コンプレッションやEQの後で、再度問題になるシビランスを別のディエッサーで叩く、といった使い方があります。また、異なる周波数帯のシビランス(例: 5kHzと10kHz)にそれぞれ別のディエッサーを適用することも効果的です。

Q
マスタートラックにディエッサーを使うのはアリ?
A:
A

はい、マスタリングの最終段階でミックス全体に適用されることがあります。特定のシンバルやボーカルのミックスが少し耳障りな場合、マスタリングエンジニアはディエッサーを使って全体の高域をスムーズにします。ただし、かけすぎるとミックス全体のパンチや明瞭度が失われるため、非常に浅い設定(1-2dB程度のリダクション)で慎重に使用されます。

Q
ダイナミックEQやマルチバンドコンプレッサーとの使い分けは?
A: 
A

ディエッサーはシビランス抑制に特化しており、操作が迅速です。ダイナミックEQはより外科的で、特定の周波数の共振(例えばアコギの特定のフレットノイズ)をピンポイントで狙うのに向いています。マルチバンドコンプレッサーはより広い帯域のダイナミクスを整形するのに使いますが、高域バンドだけを使えばワイドバンドのディエッサーとして代用可能です。

Q
リバーブやディレイにディエッサーをかけるのはなぜ?
A:
A

ボーカルのシビランス成分がリバーブやディレイに送られると、そのエフェクト音の中で「シュー」という音が強調され、非常に耳障りになります。これを防ぐため、リバーブやディレイのにディエッサーをインサートし、エフェクトに送られる信号からシビランスを取り除きます。これにより、スムーズで心地よい空間表現が可能になります。


まとめ

今回はディエッサーについて、

  • 周波数選択型コンプレッサーとしての動作原理
  • ワイドバンド/スプリットバンドの2つのモード
  • 代表的なプラグインのキャラクター
  • 得意なことと不得意なこと
  • 実践的な操作手順と聴き方のコツ
  • ソース別の具体的な設定例

といったポイントを整理してきました。

ディエッサーは、単なるシビランス除去ツールではなく、周波数とダイナミクスを同時にコントロールするための音楽的なツールです。その動作を理解し使いこなすことで、ミックスのクオリティを一段階引き上げることが可能になります。


著者について

NAO(元フリーランス ミキシング・マスタリングエンジニア)

業界経歴:1995年~2010年
セッション実績:200本以上
対応ジャンル:Pop、Rock、Hip-Hop、Jazz、Electronic Music

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