イコライザー(EQ)入口編⑤グラフィックEQとパラメトリックEQの違い完全ガイド

コンプレッサー編 8 ・イコライザー
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グラフィックEQのスライダーを「何となく」動かして、結局どこをどれくらい触ればいいのか迷っていませんか。


この記事では、グラフィックEQの仕組みとパラメトリックEQとの違いを押さえつつ、API 560(楽器用)とWaves GEQ(PA用)という具体例を使って、「トラック用にどう使うか」「会場補正でどう使うか」をはっきり切り分けて整理します。


読み終わるころには、自分のケースでどのタイプのグラフィックEQを選び、どの帯域のスライダーをどう動かせばよいか、迷いが少ない状態で判断できるようになるはずです。

1. グラフィックEQとは何か

グラフィックイコライザーは、複数のバンドパスフィルタから構成され、それぞれのフィルタが固定の中心周波数と可変ゲインを持つ処理ユニットです。

この種のイコライザーは、スライダー位置がフィルタ群の周波数応答を視覚的に表すため「graphic」と呼ばれ、直感的に操作できるのが特徴です。​


2. パラメトリックEQとの違い

グラフィックEQは、各バンドの中心周波数と帯域幅が固定されており、ユーザーが調整できる主なパラメータはバンドごとのゲインです。​

一方、パラメトリックEQでは中心周波数・Q(帯域幅)・ゲインを連続的に調整でき、特定の問題帯域をより精密に狙う用途に適しています。​

グラフィックEQはミックス全体や全体のトーン調整に向き、ピンポイントな補正にはパラメトリックEQが推奨されています。​


3. スライダーと周波数帯域の基本

3-1. 楽器・トラック用グラフィックEQ

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Waves API 560は、10本のスライダーで10個の周波数帯をまとめて扱うタイプのグラフィックEQです。

各スライダーは低域から高域までを1オクターブ刻みでカバーする配置になっており、「低音用」「中域用」「高音用」と大まかに帯域を分けて、トラックやバス全体のキャラクターを素早く整える構造になっています。

10バンドという本数は、「細かい補正」よりも「音を太くする・抜けを良くする」といったトーンシェイプに向いていて、スライダーの形を見れば、そのトラックでどの帯域を押し出したいかが直感的に把握しやすいのが特徴です。

3-2. PA用グラフィックEQ

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Waves GEQ Graphic Equalizerは、30本のスライダーでフルレンジを1/3オクターブ刻みの細かいバンドに分割して扱う構造のグラフィックEQです。

低域から高域までを細かく等間隔で区切ることで、「特定の狭い帯域だけを少し動かす」「複数のスライダーをなだらかに並べて広い帯域を調整する」といったシステム全体の補正がしやすい設計になっています。

30本のスライダーの並びそのものが「会場やスピーカーのクセをどのように補正しているか」を示す“周波数分布のグラフ”として機能し、メインアウトのトーンバランスを視覚的に確認できるのが特徴です。


4. スライダー操作で音色が変わる仕組み

4-1. Waves API 560での変化

API 560では、各スライダーを上げるとその帯域の音量が増え、下げると減ります。

例えば、低域側のスライダーを持ち上げればキックやベースが力強く聞こえるようになり、中域側を少し抑えるとこもり感が減ってクリアに感じられる、といった変化が1トラック単位で起こります。

高域側のスライダーを少しだけ上げると、ボーカルやシンバルの輪郭や明るさが増し、「前に出る」印象になりますが、上げすぎると耳につきやすくなるため、少し動かしてはEQのオン/オフで違いを確認しながら調整するのが基本的な使い方です。

4-2. Waves GEQ Graphic Equalizerでの変化

GEQでは、各スライダーを上げるとその帯域の音量が増え、下げると減ります。

低域側のスライダーを下げれば全体のローが引き締まり、高域側を上げれば全体の明るさや抜けが増すなど、スライダーの上下がそのまま「システム全体のどの帯域を強調・抑制するか」に対応します。

特定の帯域だけを少し動かすとその周波数だけが目立たなくなったり目立ったりし、複数のスライダーをなだらかに動かすと、より広い帯域のトーンを連続的に変化させられるのが特徴です。


5. グラフィックEQが活きる主な用途

5-1. 楽器・トラック用で活きる場面

API 560のような楽器・トラック用グラフィックEQは、ドラムバスに挿して低域と高域を少し持ち上げ、全体をタイトかつパンチのあるサウンドにするといった使い方に向いています。

ギターやボーカルの中域を少し整理して抜けと明瞭さを整えるなど、「個々のトラックやミックスバスのキャラクターを数本のスライダーで素早く決める」場面で特に効果的です。

パラメトリックEQで細かい調整をする前に、「10本のスライダーで方向性だけ先に決めるEQ」として使うと、ミックス全体の作業の見通しを立てやすくなります。

5-2. PA・システム用で活きる場面

Waves GEQ Graphic Equalizerのような30バンドのグラフィックEQは、ライブや配信現場でメインスピーカーやモニターの音を会場に合わせて調整する場面で活躍します。

会場の特性で特定の帯域だけが鳴りやすい、あるいはハウリングしやすい場合、その帯域付近のスライダーを数dB下げて問題の周波数だけを抑えつつ、全体のバランスを大きく崩さない補正が行われます。

また、「ローが出過ぎる」「高域が物足りない」といったスピーカーや部屋のクセに対して、低域・高域側の複数スライダーを少しずつ調整し、システム全体のトーンカーブを整える“部屋・スピーカー補正用EQ”として使うのが典型的なシナリオです。


6. グラフィックEQを扱う際の基本的な注意点

グラフィックEQで1つのバンドを大きくブースト/カットすると、その中心周波数だけでなく前後の帯域にも影響が及ぶため、比較的小さなdB単位の調整から始めることが推奨されています。​

一般的に1〜3dB程度の微調整にとどめ、極端な変化は不自然な音質につながります。​

また、グラフィックEQだけで細かな問題帯域をすべて解決しようとせず、必要に応じてパラメトリックEQやフィルター(ハイパス/ローパス)と組み合わせる使い方が一般的です。​


7. よくある質問

Q
グラフィックEQとパラメトリックEQは、ミックスではどちらを「先に」使うべきですか?
A

役割が違うだけで優先順位は決まっていませんが、全体のトーン調整をグラフィックEQ、細かい問題帯域の処理をパラメトリックEQで行う組み合わせが現実的です。

Q
API560のような10バンドEQだけで、細かい共振や耳に痛い帯域も十分に処理できますか?
A

10バンドEQはトーンシェイプ向きであり、共振のようなピンポイント処理にはパラメトリックEQやダイナミックEQを併用した方がいいです。

Q
GEQの30本のスライダーは、ライブだけでなくスタジオのミックスバスにも挿してよいのでしょうか?
A

構造上は可能ですが、記事で示している通りGEQは会場補正やシステムEQを主目的とした設計なので、ミックスバスではAPI 560など楽器・バス向けEQの方が扱いやすい場面が多いです。

Q
 「1〜3dBの微調整」とありますが、API560やGEQで5〜6dBぐらい動かしてはいけないのでしょうか?
A

禁止ではありませんが、大きく動かすほど不自然になりやすいため、まずは小さな変化でオン/オフ比較を行い、本当に必要な場合だけ大きなブースト/カットに広げるのが無難です。

Q
楽器用グラフィックEQとしてAPI560を例に挙げていますが、ギター用やボーカル用など“専用”グライコとは何が違いますか?
A

記事ではAPI 560とGEQに絞っており、特定楽器専用モデルの帯域配置やカーブには触れていないため、それら専用プラグイン固有の設計思想は別途マニュアルで確認する必要があります。

Q
PA用グラフィックEQで部屋補正をしたあと、さらにマスターバスにパラメトリックEQを挿しても問題ありませんか?
A

役割が異なるため併用自体は問題ありませんが、どちらも全体に効く処理なので、重ねがけによる過度な補正になっていないかオン/オフ比較で確認する必要があります。

Q
グラフィックEQのバンド周波数や本数は製品ごとにかなり違うようですが、「正解の本数」や「理想的な配置」はあるのでしょうか?
A

記事の範囲ではAPI560(10バンド)とGEQ(30バンド)の代表的な例しか扱っておらず、「どの本数がベストか」という一般的な正解は提示していません。用途(トラック用かシステム用か)に応じて選ぶ前提です。


8. まとめ

グラフィックEQは、固定周波数のフィルタバンクとスライダーを組み合わせ、帯域ごとに音量を調整して音色を整えるイコライザーです。​

スライダーの形がそのまま周波数特性の「グラフ」として見えるため、全体のトーンバランスを視覚的かつ直感的にコントロールできます。​

PA用と楽器・トラック用では想定する役割が異なるため、システム全体の補正にはPA用グラフィックEQを、個々のソースの調整にはトラック用のグラフィックEQやパラメトリックEQを使い分けるのが実用的です。

著者について

NAO(元フリーランス ミキシング・マスタリングエンジニア)

  • 業界経歴:1995年~2010年
  • セッション実績:200本以上
  • 対応ジャンル:Pop、Rock、Hip-Hop、Jazz、Electronic Music

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