イコライザー(EQ)入口編④パラメトリックEQの周波数・ゲイン・Q完全ガイド

コンプレッサー編 7 ・イコライザー
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ミックスしていて、「EQを触っているのに、どこをどれだけ動かせばいいか毎回迷う…」と感じていませんか。


この記事では、そんなモヤモヤを解消するために、パラメトリックEQの周波数・ゲイン・Qを「共通の手順」と「ボーカル・ドラムの具体例」で整理します。


読み終わるころには、「濁りをどこで削るか」「どの帯域をどれくらい足すか」「どこから先はディエッサーやダイナミックEQに任せるか」が、自分で判断できるようになるはずです。

1. 何をしたいか決める

EQの操作に入る前に、「何を直したいか/何を足したいか」をはっきりさせます。

  • 濁りを減らしたいのか
  • 明るさを足したいのか
  • 共振を抑えたいのか
    など、耳で素材を聴きながら目的を一つずつ決めてから、各バンドを作ります。

2. フィルタータイプも含めた基本の流れ

パラメトリックEQには、ベルのほかにハイパス/ローパス、シェルフなどのフィルタータイプがあります。
実務上の流れは概ね次の順番です。

  1. ハイパス/ローカットで「明らかに不要な一番下の帯域」を整理する。
  2. ベルフィルターで「濁り・共振など問題帯域」をカットする。
  3. ベルやシェルフで、「欲しいキャラクター」を控えめにブーストする。

※以降の手順や楽器シミュレーションは、この流れを前提にしています。


3. 共振処理の手順と注意点

目的:耳障りなピークや共振をピンポイントで抑える。

  1. バンド追加(ベル)。
  2. ゲインを中程度にブーストする。
  3. Qをやや狭めに設定し、周波数をスイープして最も耳障りな位置を探す。
  4. 見つけたらゲインをマイナス側に反転し、うるささが気にならなくなるレベルまでカット。
  5. Qを狭め・広めに動かし、「問題だけを狙い撃ちしつつ、周囲が不自然に削れない」幅を探す。

注意点:

  • 狭いQでの大きなブーストは不自然になりやすいので、「探す時だけブースト → 見つけたらカット」が基本です。
  • 一つの帯域を深く削りすぎると、音に穴が空いたように聞こえるので、「足りなければもう1バンド作る」くらいの感覚が安全です。

4. 全体的なトーン調整の手順と注意点

目的:全体の明るさ・厚み・存在感など、トーン全体をなだらかに変える。

  1. バンド追加(ベルまたはシェルフ)。
  2. 狙いたい帯域付近に周波数を合わせる(低域の厚み、声の明るさなど)。
  3. Qを広めにして、カーブが緩やかに広がるようにする。
  4. ゲインを少しずつ動かし、「キャラクターが変わるが、極端にはならない」範囲に収める。

注意点:

  • 広いQで大きくブーストすると、全体がきつくなったり歯擦音が増えたりしやすいので、ブースト量は控えめにします。
  • 広めのカットは音を痩せさせやすいので、「気になった部分だけ少し抑える」感覚で使います。

5. 不要帯域の整理と高域/低域カット

目的:ローの濁りや箱鳴りなど「いらない部分」を減らす。

  1. ハイパス/ローカットフィルターを使って、「楽器として明らかに要らない最下部の帯域」を切る(ボーカルならごく低い帯域など)。
  2. 追加のベルバンドで、濁りが出る帯域をブースト&スイープで探す。
  3. 見つけたらカット方向に回し、Qを中程度〜やや狭めにして、「濁りが消え、芯は残る」ポイントを探す。

注意点:

  • ハイパスのカットオフを上げすぎると、音の体温や厚みが失われます。必ず「オン/オフで比較し、痩せすぎていないか」を確認します。
  • 濁りを削るバンドも、やりすぎるとスカスカになるので、オン/オフ比較をこまめに行います。

6. 欲しい帯域を足すと数値のイメージ

目的:明瞭さ、存在感、空気感など「欲しい要素」を足す。

  1. バンド追加(ベルやシェルフ)。
  2. 軽くブーストしながら周波数をスイープし、「気持ちよく聞こえる帯域」を探す。
  3. Qは基本的に広めに設定し、「一点だけ飛び出す」形にならないようにする。
  4. ゲインは小さめから始め、「足りなければ少し足す」方向で調整する。

数値イメージ(考え方のレベル):

  • ブースト量は「少し変化が分かる〜やりすぎではない」程度から始める。
  • 物足りなければ少しずつ足し、オン/オフ比較で「戻した方が良い」と感じたら削り直す。

注意点:

  • 狭いQでのブーストはピーキーで不自然になりやすいので、基本は広めQで少なめブースト。
  • ブーストで歯擦音や耳障りな成分が目立ったら、「その帯域はカット」「あるいは後段でディエッサーやダイナミックEQを検討」という判断も必要になります。

7. 楽器別シミュレーション(ボーカル・ドラム)

7-1. ボーカルの例:ロー整理 → 濁りカット → 明瞭さブースト

  1. ローカット
    • ハイパスフィルターで、ボーカルとして不要な一番下の帯域を少しずつ切り上げる。
    • 「声が細くなる手前」で止める。
  2. 濁りカット
    • ベルバンドで少しブーストしてスイープし、モワッとする帯域を探す。
    • カットに反転し、Qを中〜やや狭めで調整して、濁りだけを抑える。
  3. 明瞭さブースト
    • 新しいバンドで、声が聞き取りやすくなる帯域を探す。
    • Qを広めにし、控えめにブーストし、「聞き取りやすくなるが、刺さらない」ポイントに合わせる。
  4. 必要であれば
    • ブーストで歯擦音が目立つようになった場合は、その帯域に別バンドで狭めQのカット、または別途ディエッサーなどで対処を考える。

7-2. ドラムの例:キックとスネアの連続処理

  1. キックのロー整理
    • ハイパスで、ミックス全体として不要な超低域があれば少しだけ切る。
  2. キックの濁りカット
    • ベルで少しブースト&スイープして、一番こもる帯域を探し、カットに反転。
    • Qを調整して、不要なモコモコだけを削る。
  3. キックのアタック/存在感
    • 別バンドでアタックが気持ちよく聞こえる帯域を探し、広めQで控えめブースト。
  4. スネアの箱鳴りカット
    • ベルで中程度ブースト&やや狭めQ、スイープして「ポン」と箱鳴りする帯域を探し、カットに反転。
  5. スネアの存在感
    • 別バンドでスナッピーさが出る帯域を探し、広めQで少しだけブースト。

このように、各楽器でも「ハイパスで整理 → 濁り/共振を狭め〜中Qでカット → 欲しいキャラを広めQ+控えめブースト」の流れを繰り返す、という共通パターンがあります。


8.よくある質問

Q
ハイパス(ローカット)はどこまで上げていいんですか?毎回どの楽器も必ず入れるべきですか?
A

必ずしも全トラックで使う必要はなく、「その楽器として明らかに不要な低域だけ」を切るのが基本です。声や楽器が細く感じ始めたら上げすぎなので、オン/オフで必ず聴き比べて判断します。

Q
「中程度のブースト」「控えめブースト」とありますが、どのくらいの量を目安にすればいいですか?
A

厳密な固定値はありませんが、「変化がはっきり分かるが極端ではない」程度から始め、オン/オフで比べて違和感がない範囲に収めるのが安全です。足りなければ少しずつ足す方向で調整します。

Q
共振をカットするとき、Qはどのくらいまで狭くしていいんでしょうか?細くしすぎるのが怖いです。
A

耳で聴いて「問題だけを主に削れているか」「音に不自然な穴が空いていないか」で判断します。一つのバンドで極端に深く・極端に狭くするより、必要なら複数バンドを軽めに使う方が安全です。

Q
濁りカットと共振カットの違いがよく分かりません。どう使い分ければいいですか?
A

共振カットは「キーン」「ポン」といった明確なピークを狙うピンポイント処理で、より狭いQを使います。濁りカットは「モワッとした帯域全体」を少し整理するイメージで、共振ほど極端に狭くしない中程度のQを使うことが多いです。

Q
楽器ごとのシミュレーションで周波数の具体的な数字が書かれていませんが、どの帯域から探し始めればいいですか?
A

素材やジャンルによって最適な帯域は変わるため、固定の「正解周波数」はありません。記事ではあえて数値を決め打ちせず、「軽くブーストしてスイープし、耳で一番問題・一番気持ちいい場所を探す」手順を重視しています。

Q
EQでここまで細かくやるなら、コンプレッサーやダイナミックEQはいつ使えばいいんでしょうか?
A

EQで「平均的なバランス」を整えた後でも、特定の瞬間だけ飛び出す帯域や、ボーカルの歯擦音など時間的に変動する問題は残ることがあります。そういった「一部の瞬間だけ強すぎるもの」は、ダイナミックEQやディエッサー、コンプレッサーに役割分担させるのが適切です。

Q
ボーカルやドラムの処理手順は、毎回この順番どおりにやるべきですか?それとも状況によって変えていいですか?
A

記事に書かれている手順は「安全なスタートパターン」であって、絶対の順番ではありません。素材によっては濁りカットを先にやったり、ブーストをほとんど使わずカット中心で終えるケースもあり得ます。

Q
EQのオン/オフ比較はどのタイミングで、どのくらいの頻度でやるべきですか?
A

1つのバンドを大きく動かしたあとや、新しい処理を加えた直後など、節目ごとに短くオン/オフを繰り返すのが望ましいです。「処理した方が本当に良いか」を常に疑いながら確認する習慣が、やりすぎ防止につながります。

9. EQの後に考えること(他処理との役割分担)

  • EQだけで全てを解決しようとせず、「残った問題」をコンプレッサー、ディエッサー、ダイナミックEQなどに分担させる発想も必要です。
  • 例えば、全体的に高域ブーストして歯擦音が強まった場合、「EQのブーストを少し控える」か、「その帯域だけをダイナミックに抑える処理を追加する」という選択肢があります。

著者について

NAO(元フリーランス ミキシング・マスタリングエンジニア)

  • 業界経歴:1995年~2010年
  • セッション実績:200本以上
  • 対応ジャンル:Pop、Rock、Hip-Hop、Jazz、Electronic Music

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