イコライザー(EQ)入口編①周波数と音作り完全ガイド

コンプレッサー編 3 ・イコライザー
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ミックスすると、いつも「こもっている」「うるさい」のどちらかになってしまう……そんな感覚はありませんか?


実は、その原因の多くは「どの周波数をどれくらい触るか」がぼんやりしたままEQを動かしていることにあります。


もし、周波数の基本とEQの3つのパラメータ、それから代表的なフィルターの役割さえ押さえられれば、「どこをどういじればいいか」が一気に見えるようになります


本記事では、
・EQの超基本からフィルターの使い分け
・DTMでの具体的な使い方
・耳を鍛える練習方法


までを順番に整理していきます。まずは第1章から、一緒に確認していきましょう。

1. EQは何をするツールか

イコライザー(EQ)は、「特定の周波数帯のレベルをブースト(持ち上げる)したりカット(下げる)したりして、音のトーンバランスを調整するツール」です。

多くの人は、カーオーディオやスマホの「BASS(低音)」「TREBLE(高音)」の調整機能として、すでにEQに触れています。

DTMやミックスの現場では、EQは録音された各トラックの周波数バランスを整え、全体のミックスに明瞭さとまとまりを与えるために使われます。

複数の楽器やボーカルが重なったときに「どの帯域をどのくらい変えるか」をコントロールすることで、各パートをパズルのピースのように組み合わせていくイメージです。


2. 周波数と人間の聴覚の基本

人間が一般的に聞き取れる周波数帯は、およそ20Hz〜20kHzの範囲とされていて、この範囲のどこを強調・抑えるかで音の印象が変わります。

低い周波数帯は重さや厚み、高い周波数帯は明るさや「空気感」と関係することが多い、といった傾向があります。

各楽器やボーカルには、それぞれエネルギーが集中しやすい帯域があり、ミックスではその帯域が他のトラックとぶつからないように整理していく必要があります。

どの楽器がどの帯域に多く含まれるかを正確な数値として覚えるより、「この楽器はだいたい中域が重要」「この音は高域の成分が多い」といった感覚を持つことが重要です。


3. EQプラグインの基本パラメータ

多くのEQは、次の3つのパラメータが中心になります。

  • 周波数(Frequency):
    どの位置(何Hz付近)の音を調整するかを決めるパラメータ。
  • ゲイン(Gain):
    その周波数帯をどれだけブースト/カットするか(音量変化の量)。
  • Q(キュー)または帯域幅(Bandwidth):
    どれくらい広い範囲の周波数をまとめて調整するか(狭いQ=ピンポイント、広いQ=なだらかなカーブ)。

パラメトリック型のベルフィルターは、この3つ(周波数・ゲイン・Q)を自由に調整できることが特徴で、特定の帯域を狙って整える作業に使われます。

EQ操作の多くは、この3パラメータの組み合わせで成り立っていると考えてください。


4. 代表的なフィルタータイプ

4-1. ハイパスフィルター(ローカット)

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どんな時に使うか

  • ボーカルやギターなどで、演奏には関係ない低いゴロゴロした成分を消したい時。
  • キックやベース以外のトラックから、不要な低域を整理してミックスをクリアにしたい時。

何をするフィルターか
ハイパスフィルターは、設定した周波数より下の低域を大きく減らし、それより上の帯域を通過させるフィルターです。

そのため、「必要な低音だけ残して、不要なローエンドやノイズを掃除する」用途に向いています。

TIPS

  • 例えば、「このトラックは“低音担当”か?」と自問して、担当でないなら軽くハイパスを入れる、という決め方にすると迷いにくくなります。
  • カットしすぎると痩せた音になるので、オン・オフを切り替えながら「変化がギリギリ分かるくらい」から始めると安全です。

4-2. ローパスフィルター(ハイカット)

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どんな時に使うか

  • シンセやパッドなどの高域が耳に刺さる、あるいは音数が多く高域がごちゃつく時。
  • 「遠くで鳴っている感じ」や「こもらせた効果」をあえて出したい時。

何をするフィルターか
ローパスフィルターは、設定した周波数より上の高域を減らし、それより下の帯域を通過させるフィルターです。

耳障りな高域ノイズや過剰な倍音を抑えたり、ミックスで前後感を作る用途に向いています。

TIPS

  • シンセパッドや効果音で「存在は欲しいけど主張は弱くしたい」音には、ローパスで上を落としてあげると他のパートの邪魔をしにくくなります。
  • ハイハットやシンバルなど、高域が命のパートにはローパスを多用しすぎないよう注意しましょう。

4-3. シェルビングフィルター(ハイシェルフ/ローシェルフ)

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どんな時に使うか

  • 全体的に「もう少し明るさが欲しい」「もう少し低音の量感が欲しい」という時。
  • マスタリングやバス処理で、音のキャラクターをざっくり整えたい時。

何をするフィルターか
シェルビングフィルターは、指定した周波数より上(ハイシェルフ)または下(ロウシェルフ)の帯域を、まとめてブースト/カットするフィルターです。

家庭用オーディオの「BASS」「TREBLE」に近い動きを、より自由な周波数と量で行えるイメージです。

TIPS

  • 「ピンポイントで1か所だけ直す」より、「高域全体を少し明るくする」「低域全体を少し締める」といった“ざっくり調整”に向いています。
  • 変化が大きく出やすいので、ブーストもカットもまずは少なめ(±1〜3 dB程度)から試すと扱いやすいです。

4-4. ベルフィルター(ピーク/ディップ)

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どんな時に使うか

  • ボーカルの「こもり」や「鼻にかかった感じ」など、特定の帯域だけ直したい時。
  • スネアのアタックを少しだけ強調したい、ベースの「もやっと感」だけを抑えたい時。

何をするフィルターか
ベルフィルターは、中心となる周波数を決め、その周囲を「山型に持ち上げる」または「谷型に削る」フィルターです。

周波数・ゲイン・Q(帯域幅)を調整することで、狭くピンポイントにも、広くなだらかにも効かせることができます。

TIPS

  • 「どこが悪さをしているかわからない」時は、いったん少し大きめに持ち上げてスイープし、問題帯域を探してからカット方向に回す、という手順が一般的に紹介されています。
  • Qを狭くすると“手術”的、広くすると“トーン調整”的な効き方になるので、「直したい」「キャラを変えたい」でQの広さを変えると用途を整理しやすいです。

4-5. フィルター選び「まとめ」

  • 不要な帯域を「ごっそり切り落としたい」 → ハイパス/ローパス。
  • 低域・高域の量を「全体的にもう少しだけ変えたい」 → ロウシェルフ/ハイシェルフ。
  • 特定の帯域を「ピンポイント、または限定的に直したい/強調したい」 → ベルフィルター。

5. DTMでのEQの主な使い方

5-1. いらない音・ノイズを減らす「お掃除EQ」

何をするのか
録音されたトラックから、その楽器としては不要な低音や高音、ノイズっぽい成分をカットして、土台をきれいにする使い方です。

たとえば、ボーカルやギターから超低音のゴロゴロをハイパスフィルターで切る、耳障りなピークだけをベルで少しカットする、といった処理がここに入ります。

TIPS

  • 例えば、「この楽器は本当に低音が必要か?」と自分に聞いてからハイパスを入れると失敗しにくいです。
  • 変化がよく分からないくらい軽めのカットから始めて、オン/オフを切り替えながら「やりすぎていないか」を必ず確認してください。

5-2. トラック同士のぶつかりを減らす「スペース作りEQ」

何をするのか
複数のトラックが同じ帯域を取り合って、どれも聞き取りづらくなっている場所を、EQで少しずつ整理する使い方です。

典型的なのは、キックとベース、ボーカルとギター/シンセの中域などで、片方のその帯域を少し下げることで、もう片方が聞きやすくなります。

TIPS

  • 「どの組み合わせで再生すると聞きづらくなるか?」を先に探してからEQに触ると、無駄な調整が減ります。
  • 片方を大きくブーストするより、「主役をそのまま/少し上げて、脇役を少しだけ下げる」ほうが自然に聞こえやすいです。

5-3. 音のキャラクターを整える「味付けEQ」

何をするのか
楽器やボーカルの「明るさ」「太さ」「柔らかさ」などの印象を、少しだけ整えたり強調したりする使い方です。

例として、暗くこもったボーカルの高域を軽く持ち上げて明瞭さを足す、細いスネアの中低域を少し足して太さを出す、などがあります。

TIPS

  • いきなり大きくブーストするのではなく、「まずはカットで違和感を減らせないか」を試してから、必要ならブーストする順番がおすすめです。
  • 「ソロで聴いたときに格好いい音」ではなく、「全体の中でちょうどいい音」をゴールにすると、やりすぎを防げます。

5-4. 3つの使い方を混ぜるときの優先順位

  1. まず「お掃除EQ」で明らかな不要成分を減らす。
  2. 次に「スペース作りEQ」で、主役が聞きやすいように他のトラックを少しどかす。
  3. 最後に「味付けEQ」で、全体を聴きながら必要なところだけキャラクターを整える。

TIPS

1つのトラックにたくさんのEQバンドを使うより、「目的ごとに少ないバンド数で済ませる」ことを意識すると、初心者でも管理しやすくなります。

迷ったら「今やろうとしているのは、お掃除・スペース作り・味付けのどれか?」と自問すると、目的がブレにくくなります。


6.一人でできる「EQ当てクイズ」練習

手順①:素材とEQを用意する

  • 好きな曲や自分のミックス、ループ素材など「よく聞き慣れた音源」を1つ用意し、マスタートラックやそのトラックにEQを挿します。
  • パラメトリックEQで、ベルフィルターが使えるバンドを1つだけオンにします。​

TIPS

  • 素材は「変化が分かりやすい」歌モノやフルミックスの方が練習しやすいです。

手順②:未来の自分に向けて「仕掛け」を作る

  1. EQバンドのゲインを、+6 dB前後のブーストか、−6 dB前後のカットに設定します。
  2. 周波数を、例えば以下のどれかに「ランダムで」決めます(サイコロや乱数、適当にマウスで動かすなど)。
    • 100 Hz / 250 Hz / 500 Hz / 1 kHz / 2 kHz / 4 kHz / 8 kHz など、いくつか候補をメモしておく。
  3. Q(帯域幅)は「中くらい」(極端に狭すぎず、広すぎない)にしておきます。
  4. この状態でプロジェクトを保存し、EQウィンドウは閉じるか、いったん別のことをして「どこをいじったか」を忘れる時間をつくります。

TIPS

  • 「どの周波数にしたか」は紙やメモアプリに書いておき、画面からは見えないようにしておくとクイズにしやすいです。

手順③:翌日(または時間を空けて)クイズ開始

  1. 音源を再生し、「元の音」と「EQ適用後」をオン/オフで聴き比べます(バイパスボタンを使う)。
  2. 「どのあたりが変わったか」を、自分の言葉でメモします。
    • 例:「低めがモコっとした」「声のこもりが取れた」「シンバルあたりが刺さる感じ」など。
  3. 「低域/中域/高域」のどこか、さらに余裕があれば「だいたい○○ Hzくらい?」と、自分なりに答えを出します。

TIPS

  • 一回で正確な数字を当てる必要はありません。「低い」「真ん中」「高い」がだんだん細かくなっていけばOKという前提でやると気が楽です。

手順④:答え合わせと「ズレ」を確認する

  1. EQ画面を開き、実際に設定していた周波数・ゲイン・Qを確認します。
  2. 自分の予想とどれくらい違ったか、「思っていたより高かった/低かった」といったズレをメモします。
  3. ズレた場合は、その周波数を今度は意識的にいじって、「この位置はこういう聞こえ方をする」と頭に焼き付けます。

TIPS

  • 間違えた周波数は「今日の復習周波数」として、別の素材でも同じ帯域をブースト/カットして聞くと記憶に残りやすいです。

手順⑤:難易度を少しずつ上げる

慣れてきたら、段階的に条件を変えていきます。

  • ステップ1:まずは「低域/中域/高域」の3カテゴリーで当てる。
  • ステップ2:次に「100 / 250 / 500 / 1k / 2k / 4k / 8k Hz」など、決め打ちした候補から1つを当てる形式にする。
  • ステップ3:最終的には、ブーストだけでなくカットも混ぜ、「どの帯域がどっち方向に動いたか」まで当てる。

TIPS

  • 1日5〜10分程度を継続する方が、たまに長時間やるより効果的だとされます。

EQ Academy(無料)で学ぶ

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EQ Academyの概要

  • Mastering The Mixが配布している、EQ専用の耳トレーニングツール。
  • 音源に対してEQをかけ、お手本(ターゲットEQ)の音にどれだけ近づけられるかをゲーム感覚で練習する仕組みです。

主な特徴

  • 約100レベル・10セクション構成
    • EQ Explorer, Frequency Finder, Sound Sculptor などのセクションに分かれ、基礎から応用まで段階的に進む設計。
  • 練習内容は「実際のEQ操作」
    • ゲイン(ブースト/カット)、周波数位置、Q(帯域幅)、Mid/Side処理などを、実際にノブやノードを動かしながら学びます。
  • ターゲットEQ方式
    • 各レベルでターゲット(目標)のEQカーブと音が用意され、自分のEQを調整して「どれだけ近づけられたか」でスコアが決まります。

ゲーム要素・継続しやすい仕組み

  • スコア・レベルアップ・トロフィー
    • セクションごとのテストに合格するとトロフィーが貰えるなど、進行度が視覚化されます。
  • バトル機能・ランキング
    • 他のユーザーとスコアを競う「Battles」や、グローバルランキングで上達を確認できる仕組みがあります。​
  • チャレンジビルダー
    • 自分が苦手な要素(例えば特定の帯域やMid/Sideなど)に絞った問題だけを出題させる機能も用意されています。

実用面でのポイント

現時点では、Mastering The Mixのニュースレター登録者向けに無料配布されている形が案内されています。

好きな曲を読み込んで練習できる

自分のトラックや市販の楽曲をインポートして、その音源を素材にEQ練習が可能です。

「耳を鍛える」ことに特化

スペアナを眺めるより、「耳でEQ変化を判断する」ことを重視した設計で、理論というより“EQの勘所”を体で覚えることに焦点があります。


7.よくある質問

Q
「アナログEQ」と「デジタルEQ」は何が違うの?
A

アナログEQ(やそのモデリングプラグイン)は、カーブや倍音の出方が固定されていて「キャラクター」を与える目的で使われることが多く、デジタルEQはより正確で柔軟なカーブと設定ができる「万能工具」のような位置づけです。

Q
リニアフェーズEQと普通のEQ(最小位相EQ)はどう使い分ける?
A

リニアフェーズEQは位相の変化を抑えられる代わりにレイテンシーやプリリンギングが発生しやすく、主にマスタリングやパラレル処理など「位相のズレを極力避けたい場面」で使われます。

普段のトラックEQやリアルタイム性が重要な場面では、一般的な最小位相EQがよく使われます。

Q
ダイナミックEQは普通のEQと何が違うの?
A

ダイナミックEQは、設定した周波数帯を「常に」上げ下げするのではなく、音量(レベル)が一定のしきい値を超えた時だけブースト/カットが動くEQです。

特定の帯域が時々だけうるさくなるボーカルやシンセなどに対して、コンプレッサーより周波数を絞ってコントロールしたい場面で使われます。

Q
EQマッチ(Match EQ)はどんな時に使う?
A

EQマッチは、リファレンス曲や別テイクの音と自分の音を比較し、その差を自動的に埋めるEQカーブを生成する機能です。

別録りのボーカルテイクの音色差を揃えたり、特定のリファレンス曲に近いトーンバランスを目指す時などに使われます。

Q
「ミックス用EQ」と「マスタリング用EQ」は違うの?
A

多くのメーカーは、同じ「EQ」でも、ミックス向けにはバンド数や操作性を重視したパラメトリックEQ、マスタリング向けにはより高精度・高解像度なカーブやリニアフェーズ/ダイナミックモードなどを備えたEQを用意しています。

マスタリングEQは、フルミックス全体に対してごく小さなブースト/カットで仕上げを行う用途を想定した設計になっていることが多いです。

Q
EQでどれくらいブースト/カットしても大丈夫?
A

基本的に「○dBまで」といった絶対値のルールは示されていませんが、ミックスやマスタリングでは小さめの変化(数dB程度)を積み重ねるアプローチが基本です。

極端なブーストが必要になる場合は、録音やアレンジ、他の処理(コンプ・サチュレーションなど)を見直したほうがよい場合が多いです。

Q
EQはインサートチェーンのどこに置くのが良い?
A

「絶対的な正解」はありませんが、

  • ノイズ除去や基本的なお掃除EQ →
  • ダイナミクス処理(コンプなど) →
  • トーン調整やキャラクター付けEQ
    といった順序が多いです。 実際には、コンプ前に不要帯域を軽くカットし、コンプ後に最終的なトーンを整える、といった組み合わせで使われることが多いです。
Q
EQするときにスペクトラムアナライザーはどこまで信用していい?
A

スペクトラムアナライザーは「耳で感じた違和感を確認したり、問題の位置を見つけるための補助ツール」です。

つまり、グラフはあくまで視覚的なヒントであり、最終判断は耳で行う前提です。

8. EQを使う前に意識すること

まずは、「EQを挿す前に、まずはフェーダーのバランスとアレンジの見直しでどこまでいけるかを確認すること」をお勧めします。

アレンジの段階で、特定の帯域に音を詰め込みすぎないようにできれば、必要なEQ処理は少なくて済み、ミックスもスムーズに進みます。

本記事で押さえたべきポイントは、「EQは周波数ごとのバランスを調整するツールであること」「周波数帯と耳で感じる変化を結びつけること」が分かれば、「5. DTMでのEQの主な使い方」で紹介した3つの使い方(お掃除/スペース作り/味付け)も理解しやすくなります。

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