本記事では、ゲートの動作原理、代表的なプラグイン、ゲートの得意分野と不得意分野、実践的な操作方法から具体的な設定例まで、忖度なしの事実ベースで専門的に掘り下げていきます。
1. ゲートの特徴
ゲート(noise gate)は、オーディオ信号が設定されたスレッショルド(閾値)を下回った際に、その信号を減衰または遮断するダイナミクスプロセッサーです。コンプレッサーがスレッショルドを超えた信号に対して動作するのに対し、ゲートはスレッショルドを下回った信号を処理する点が根本的に異なります。
1-1. ゲートとエキスパンダーの本質的な違い
技術的には、ゲートは無限大レシオのダウンワードエキスパンダーと見なせます。
ゲートはスレッショルド以下の信号を、ほぼ一定量(Range)だけ一気に下げます。多くの設計ではレシオは事実上∞:1(あるいは100:1など)となっています。
ダウンワード・エキスパンダーはスレッショルド以下の信号を、レシオに応じて徐々に下げます。典型的には1.5:1~4:1程度です。
エキスパンダーの方が変化が滑らかで「自然なノイズリダクション」に向く一方、ゲートはよりアグレッシブで、完全に切りたい/ブツ切りにしたい場面に向くと考えると整理しやすくなります。
1-2. 基本パラメータと動作挙動
どのゲートでもほぼ共通して存在するのは次のパラメータです。
Threshold(スレッショルド):ゲートが開閉を判断する音量レベルです。これより大きいと「開く」、小さいと「閉じる」という判断基準になります。
Attack(アタックタイム):スレッショルドを超えてから、ゲートが完全に開くまでの時間です。極端に速いとクリック/パツッとした立ち上がり、遅いとトランジェントが丸くなります。
Release(リリースタイム/Decay):信号がスレッショルドを下回ってから、ゲートが完全に閉じるまでの時間です。速すぎると「ブツ切り」、遅すぎるとノイズが長く残ります。
Hold(ホールドタイム):信号がスレッショルドを下回ったあと、リリースに入るまでゲートを開いたままにする時間です。スピーチやドラムなどで、音量がスレッショルド近辺をフラフラする時のチャタリング防止に有効です。
Range / Floor / Depth(レンジ/フロア):ゲートが閉じた時に、信号を何 dB 減衰させるかを決定します。例えば Range = -20 dB であれば、ゲート閉状態で 20 dB 減衰します。完全ミュートしたいなら -∞ dB、自然さ重視なら -10 ~ -20 dB 程度に抑える手もあります。
1-3. 拡張機能とその実装
Hysteresis(ヒステリシス):開くスレッショルドと閉じるスレッショルドを別々に持たせる機能です。例えば Open Threshold を -20 dB、Close Threshold を -25 dB に設定することで、信号がスレッショルド近辺で揺れていても頻繁に開閉しません。チャタリング防止に非常に有効です。
SSL X‑Gate では、ユーザーが手動で調整可能な Open/Close Threshold が実装されています。FabFilter Pro-G では自動内蔵ヒステリシスが採用されており、ユーザーが数値調整することはできませんが、内部で最適化された設計になっています。
Look-ahead(ルックアヘッド):信号を数 ms 先読みし、アタックが来る前にゲートを開ける機能です。ドラムなど鋭いトランジェントを持つソースで、トランジェントが削れないようにするために有効ですが、代償として、その分だけレイテンシーが増えます。ライブ用途では注意が必要です。
Sidechain / Key Input(サイドチェイン):ゲートの開閉を、別の信号(キック、ボーカルなど)で行う機能です。典型例としては、キックをキーにしてベースにゲートをかける(キックと一体感のあるベース)、スネアをキーにしてルームマイクにゲートをかけ、スネアヒット時だけルームを立ち上げる、といった用途があります。
Sidechain Filtering(サイドチェイン・フィルタリング):サイドチェインに入る信号を EQ でフィルタし、特定帯域だけに反応させる機能です。スネアトラック上のゲートで、キック成分を避けるためにサイドチェイン側にローカットを挿入する、タム上のゲートで、シンバルブリードを無視するために、タムの基音周辺だけを通すバンドパスを設定する、といった運用が可能です。
2. 代表的なゲートプラグイン
業界で評価の高い代表的なプラグインを、そのキャラクターと得意分野に分けて整理します。
2-1. 汎用・透明性重視系
FabFilter Pro‑G(Gate/Expander)

6種類のアルゴリズム(クラシックゲート、クリーンエキスパンダー、クリエイティブ用途など)を搭載。Mono / Stereo / Mid-Side 処理に対応し、外部サイドチェイン入力とサイドチェイン EQ を装備。可変 Range / Hold / Knee、Look-ahead 最大 10 ms を備え、ゲート状態、レベル、トランスファーカーブがリアルタイム表示される詳細なメータリングが特徴です。汎用的なドラムゲート、ボーカルの軽いエキスパンション、クリエイティブなリズムゲートなど幅広い用途に対応します。
Waves C1 Gate/Expander

Compressor/Expander、Gate/Expander、Filter/EQ の3モジュール構成を採用。スプリットバンド・ダイナミクス(特定帯域だけをゲート/コンプ)、内部/外部サイドチェイン、ルックアヘッド機能を搭載し、24bit / 192 kHz 対応です。ボーカルや楽器の帯域限定ゲート、ポストプロダクションでのノイズ制御などに向きます。
SSL X‑Gate

Open Threshold / Close Threshold(独立した開閉スレッショルド)を手動で調整可能な、コンソール由来のフル機能ゲートです。Attack / Release / Hold を個別設定でき、サイドチェイン用 HPF / LPF フィルタグラフ、Peak / RMS 検出切替、Duck モード(スレッショルドを超えた時に減衰する逆ゲート)、Mid-Side 処理、Gate Listen(カットされている成分をモニター)を装備。ライブ/放送コンソール由来のワークフローを DAW で再現できます。
2-2. AI駆動・特殊機能系
sonible smart:gate
AI 駆動のコンテンツ認識型ゲートです。ソースプロファイル(Snare, Kick, Vocal 等)を選ぶと、その音色だけを高精度で検出します。レベルではなくコンテンツ(音色)ベースで動作する設計で、Look-ahead 付きで自然なゲート動作、3バンドのサプレッションコントロールによる帯域別ゲートを実現しています。
Waves Intrigger
AIベースのゲート+サンプルトリガーです。音色ベースでヒットを識別し、狙ったドラムヒットだけを抽出します。ゲートとサンプル置き換えを統合しており、ステレオループから特定ドラムだけを取り出す用途などに向きます。
Sonnox Oxford Drum Gate
ドラム専用ゲートです。ドラムトラックのアンビエンスをカットし、ドライな質感に変える用途に特化しています。ヒットの検出、パターン認識などドラム向けロジックを搭載しています。
3. ゲートの得意な領域と不得意な領域
ゲートの機能を正確に理解するため、得意とする処理と不得意とする処理を整理します。
3-1. ゲートが得意なこと
背景ノイズ・ルームノイズの抑制:録音時のマイク/プリアンプノイズ、PCファン、エアコンなどの低レベルな常時ノイズを、演奏していない区間だけ自動でミュートできます。特にセリフやナレーション、静かなボーカル録音で、休符部分のノイズだけを消したい時に有効です。
ドラムのブリード低減:スネアマイクへのハイハット、タムマイクへのスネアやシンバルなど、ドラムマルチマイク特有のブリードを減らす用途が定番です。適切な Threshold / Range / サイドチェイン EQ を設定することで、望ましいヒットだけを残し、不要なブリードを抑えられます。
ギターアンプや DI のハム/ヒスのカット:ギターアンプは演奏していない時にハムやヒスを出しがちですが、ゲートを挿入しておけば演奏していない間だけアンプノイズをミュートできます。DI やエレアコなどの軽いハム/ノイズにも、浅めのゲート(あるいはエキスパンダー)が有効です。
トランジェントの強調・タイムシェイピング:Attack / Release / Range を調整することで、ドラムヒットやパーカッションの立ち上がりと減衰を強制的に整え、タイトな印象にできます。フロアタムなどで Release を長めに設定すれば、ブリードを抑えつつ自然なサステインを残せます。
リバーブテールの制御(ゲーテッドリバーブ):80年代的なゲーテッドスネアリバーブのように、リバーブトラックにゲートをかけることで、特定のポイントでリバーブを不自然にブツ切りにする効果が得られます。
サイドチェインによるリズム/ダッキング効果:ゲートをサイドチェインでトリガーし、リズム的なオン/オフを作ることで、トランスゲート的なチョッピングや、ミックス内のダッキングを実現できます。
3-2. ゲートが不得意なこと
信号と同レベル以上のノイズ除去:ゲートはスレッショルドを超えた瞬間、ノイズも含めて全部通してしまいます。つまり「信号とノイズのレベル差が小さい」録音では、ゲートを開けた瞬間にノイズもフルレベルで出てきてしまいます。背景ノイズが前面に出てしまうような録音の場合、ゲートではなくノイズリダクション(iZotope RX 等)や再録音が必要です。
ボーカル処理:ボーカルはダイナミックレンジが大きく、弱い声や語尾がスレッショルド付近をうろつきやすいため、安易なゲートは語尾欠け/ブレス欠け/チャタリングを起こしやすくなります。多くのエンジニアはボーカルに対してゲートではなくエキスパンダー、手動フェード、ノイズリダクションを推奨しています。
持続音・パッド系の処理:シンセパッドやストリングスなどサステイン主体の音では、スレッショルド以下の時間が短く、ゲートがほとんど意味をなさないか、ブツ切りになるだけで音楽的に悪影響が出やすくなります。
極端に遅い環境音や残響:環境音全体を滑らかに下げたい場合は、ゲートよりもマルチバンドエキスパンダー/ダイナミック EQ の方が自然に仕上がるケースが多くなります。
4. 実践的な操作手順と変化の聴き方
ここでは、汎用的なゲートを例に、基本的な操作手順と聴くべきポイントを整理します。
4-1. セットアップの流れ
複数の資料で推奨されている、実践的なゲート設定の手順を整理すると、おおむね以下の流れになります。
「ゲートなし」の状態から始める:Threshold を最小(=ゲートが常に開いている状態)、Range を最大減衰量(あるいは Ratio を最大)、Attack を最短、Release を最長、Hold を 0 か最小に設定します。
Threshold を上げていき、不要なノイズが消えるところを探す:ソースをソロ再生しながら、不要なノイズ(ブリード/ハム)が消え、かつ欲しい信号がギリギリ途切れないポイントまで上げます。ドラムの場合は「最も弱いヒット」が通るかどうかを基準にします。
Attack を調整:ドラム等のトランジェントは基本的に最速近辺で問題ありませんが、クリック感が出る場合は少しだけ遅くします。ボーカルでは 1–3 ms 程度が推奨されています。
Release を調整:ソースを聴きながら、自然な減衰を保ちつつ、不要なノイズが目立たない程度まで短くします。速すぎると「尻尾が切れる」、遅すぎるとノイズ/ブリードが長く聴こえます。
Hold を必要に応じて追加:ゲートが「パカパカ」「ザワザワ」鳴る(チャタリング)場合は Hold を増やして、一定時間ゲートが開いたままになるようにします。
Range / Floor を調整:一度は最大減衰(-∞ dB 等)で動作を明確に確認したうえで、最終的には -10 ~ -20 dB 程度に戻すと自然になりやすくなります。
4-2. 聴き取りのポイント
Threshold の聴き方:ドラミングの最も弱いヒット、ボーカルの最も小さい語尾に着目します。それらが途切れ始めるポイントの少し下が、実用上の上限です。チャタリングが多い場合は、Threshold を少し下げ、代わりに Range や Hold でコントロールする方が自然なことも多くなります。
Attack の聴き方:ドラムでは、速すぎると、ゲートが開く瞬間にクリックや小さなポップノイズが乗ることがあります。遅すぎると、キックやスネアのアタック成分が削れ、モコッとした音になります。パッド/ボーカルでは、遅めの Attack を使うと、アタックをなだらかにして柔らかい印象にする「トランジェントシェイパー的」な使い方も可能ですが、ゲートの目的がノイズ除去であれば基本は速めを使います。
Release の聴き方:ドラムの場合、ソースをソロで聴き、「楽器の自然な減衰」がそのまま聴こえる最短リリースを探します。タムの場合、上タムは 300 ms 前後、フロアタムは 500 ms 前後が一般的な目安とされています。ボーカルでは約 100 ms が「とりあえずの出発点」として提案されることが多くなっています。
Hold の聴き方:ゲートが「開く/閉じる」を頻繁に繰り返すとき、Hold を増やすと開いている時間が一定以上保たれ、チャタリングが消えていきます。ボーカルでは 20–30 ms 程度の Hold が推奨される場合が多くなっています。
4-3. サイドチェイン EQ(フィルタリング)の実践
サイドチェイン側に EQ を挿入して特定の帯域だけを検出させると、ゲートの誤動作を大幅に抑えられます。
ゲートの「Sidechain Listen」「Key Listen」機能をオンにします。検出させたい楽器の基音/特徴帯域だけが強調されるように EQ を調整します。スネアなら 200–250 Hz 付近を中心にバンドパス、キックなら 60–80 Hz 付近を中心に設定します。
フィルタされたサイドチェイン音は「綺麗に聴こえる必要はない」という点が重要です。目的は「欲しい信号と不要な信号の振幅差を最大化すること」です。
5. ソース別・実践的な設定例(10選)
ここでは、スタートポイントとして使える設定例をまとめます。あくまで出発点です。最終的には必ずご自身の耳で判断してください。
用途 | Range | Attack | Release | Threshold設定 | ヒント |
|---|---|---|---|---|---|
キックドラム(近接マイク) | -12 dB | 5 ms | 150 ms | 最も弱いヒットが確実に通るレベル | Sidechain Filter:70 Hz 付近を中心に設定。ベース/サブの回り込みを低減 |
スネアトップ | -12 dB | 5 ms | 200 ms | ハイハットブリードよりやや上 | Key Filter:250 Hz 付近(スネアのボディ)。ハイハットブリード対策にローパス or バンドパス |
タム(ラック/フロア) | -12 dB | 5 ms | 300-500 ms | 最も弱いヒットが通るギリギリ | ハイタム:300 ms、フロアタム:500 ms。Key Filter:80–180 Hz(各タムの基音) |
ドラムルームマイク | -10 dB | 1-5 ms | テンポに合わせる | ドラムシェルバスをキーに | Range は完全ミュートせず。シンバルウォッシュ抑制、インパクト時のみルームを立ち上げ |
ボーカル(軽いゲーティング) | -10~-20 dB | 1-3 ms | 100 ms | 部屋ノイズより上、ブレスより下 | Hold:25 ms。実務上はエキスパンダー/ノイズリダクション推奨 |
ギターアンプ(ハム/ヒス抑制) | -∞ dB | 3-5 ms | 100-200 ms | ハム/ヒスがギリギリ超えない位置 | 演奏していない時のアンプノイズをミュート。コードチェンジの自然さを保つ |
ベースギター(キック同期) | -∞~-20 dB | 中速 | 中速 | キックが鳴っている間だけ開く | キックトラックをサイドチェインキーに指定。タイトなローエンド |
ループ素材(トランスゲート) | -∞ dB | 最速 | Hold/Releaseで長さ調整 | MIDI トリガーで制御 | ホワイトノイズやクリック音をMIDIで打ち込み、リズムパターンに切り刻む |
ゲーテッドリバーブ(スネア) | -∞ dB | 最速 | 300-600 ms | スネアヒット時のみ開く | スネアをサイドチェインキーに設定。リバーブトラックにゲート挿入 |
ポッドキャスト/会議マイク | -10 dB | 速め | 100-200 ms | 話していないマイクを抑える | 複数マイクのクロストーク抑制。過度なオン/オフ感を避け、浅めのエキスパンション推奨 |
6. お勧めしない使い方
レコーディング段階でのゲート:一度ゲートによって削られたトランジェントやテールは、後から取り戻せません。DAW 内では後からいくらでも非破壊でゲートを挿入できます。レコーディング時にゲートをかけるのは原則避け、ミックス段階で挿すべきとされています。
ボーカルへの強いゲート:多くの VO/ポストエンジニアが「ボーカルにゲートを使うな」と警告しています。語尾・弱い発声・ブレスが欠け、後段のコンプレッサー/EQ でゲートのオン/オフが強調され、不自然なポンピングや音色変化が顕著になります。推奨代替は、手動フェード、クリップゲイン、ノイズリダクション(iZotope RX 等)です。
高ノイズフロア録音の「救済策」としてのゲート:背景ノイズが演奏と同等レベルに達している録音は、ゲートでは救えません。ゲートをかけても、音が鳴っている間はノイズがそのまま残るため、有用な結果になりません。根本的には、録音環境の改善と再録が唯一現実的な解決策です。
Range / Ratio の極端な設定による「完全無音」依存:Range を -∞ dB、あるいは Ratio を 100:1 固定のまま運用すると、不自然な「真空状態の無音」が頻発します。多数のエンジニアが「-8 ~ -15 dB 程度の減衰に留めることで、ゲートが閉じたときの違和感が減る」と提案しています。
サイドチェインフィルタなしでのドラムゲート:サイドチェインフィルタを使わず、フルレンジのままスネアやタムにゲートをかけると、キックやシンバルがスレッショルドを跨いで誤トリガーしやすくなります。その結果、タムのゲートがスネアで開く、スネアのゲートがキックで開く、といった問題が発生します。高域/低域を切って、ターゲットドラムの基音帯域だけに反応させるのが実務上の定石です。
Look-ahead をライブサウンドで多用:Look-ahead はトランジェント保護に有効ですが、ユーザー設定量に応じたレイテンシーを確実に導入します。ライブモニター/インイヤー環境では数 ms の遅延でも演奏者に違和感を与え得るため、Look-ahead はスタジオ/ポスト用途に限定するのが安全とされています。
ゲートだけで「完璧なノイズ除去」を目指す:ゲートは「音が鳴っていない時間」のノイズ制御ツールであり、「音が鳴っている時間」の帯域ごとのノイズは処理できません。完全なノイズ除去を求める場合は、マルチバンドエキスパンダー、ダイナミック EQ、スペクトラルノイズリダクションと併用する必要があります。
7. よくある質問
- Qゲートとエキスパンダーはどう使い分けるべき?
- A
音を「完全に切りたい」場面(ドラムブリードの抑制、アンプハムのミュート、ゲーテッドリバーブなど)はゲート、音を「自然に静かにしたい」場面(ボーカルやアコースティック楽器のノイズ低減など)はエキスパンダーの方が向きます。
- Qチャタリング(バチバチ開閉する)を止めるには?
- A
Hold を増やす、Hysteresis(開閉スレッショルドを別々に設定)を使う、Threshold をわずかに下げて代わりに Range で減衰量を増やす、サイドチェインフィルタリングで不要な帯域の影響を減らす、といった対処が有効です。
- Qドラムブリードが完全に消せないが?
- A
サイドチェイン EQ で、ターゲットドラムの基音付近だけを検出するようにします。場合によっては2段構成(ダッカー+ゲート、あるいは軽いエキスパンダー+ゲート)を用いて、まずブリードのレベル差を拡大してから本ゲートで切ります。「完全に無ブリード」を目指すとドラムの自然さが失われることも多いため、-10~-15 dB 程度の抑制で止める選択肢もあります。
- Qトランジェントが削れてしまう場合の対処は?
- A
Attack を最短にします。Look-ahead をオンにして、数 ms 先読みします。それでもダメなら Threshold を少し下げるか、エキスパンダーに切り替えます。
- Qボーカルにゲートを使ってもいい?
- A
技術的には可能ですが、多くのボイスオーバー/ポスト系エンジニアは使用を推奨していません。語尾や弱い発声が切れやすく、後段のコンプ/EQ でゲートのオンオフが強調され、ポンピングや音色変化が目立ちます。代替として、手動フェード、クリップゲインでの整音、ノイズリダクションプラグインなどが推奨されます。
- Qゲートはミキシングチェーンのどこに挿すべき?
- A
一般的な推奨は「EQ/コンプより前」です。ゲート前にコンプを入れると、ダイナミクスが圧縮され、ゲートが誤動作しやすくなります。ただし、サイドチェイン用に別バスを作るなど、例外的なルーティングもあり得ます。
- QRange / Floor はどのくらいが適切?
- A
完全ミュートが目的なら、Range 最大(-∞ dB)でよいです。自然さ重視なら、-10 ~ -20 dB 程度に抑えると、「完全な無音」が避けられ、耳に優しくなるという意見が多くなっています。
- Qゲートでノイズが「完全に」消えないのはなぜ?
- A
ゲートは「音が鳴っていない時間」のノイズを消すだけであり、「音が鳴っている最中」に存在するノイズは消せません。信号とノイズが同時に鳴っている場合は、ノイズリダクションや再録の問題領域になります。
- Qレコーディング時にゲートをかけるのはアリ?
- A
現代の DAW 環境では、「録音時ゲートは推奨されない」というのが主流の見解です。一度ゲートで切り落とした情報は、後から取り戻せません。ミックス時には DAW 内でゲート/エキスパンダーをいくらでも追加できます。したがって、レコーディング時は素の信号を残し、ミックス段階で必要に応じてゲートを挿すのが安全です。
- Qマルチバンドゲートを使う利点は?
- A
ドラムなどで、高域(シンバルブリード)だけを素早く閉じ、低域(タムのボディ)は長く残す、といった帯域別のゲート挙動が可能になります。これにより、「自然なボディ+クリーンなトップ」という両立がしやすくなります。
まとめ
今回はゲートについて、
- ゲートとエキスパンダーの本質的な違い
- 基本パラメータと拡張機能
- 代表的なプラグインのキャラクター
- ノイズ除去とダイナミクス整理のバランス
- 実践的な操作手順と聴き方のコツ
- ソース別の具体的な設定例
といったポイントを整理してきました。
ゲートは、ノイズ除去とトランジェント整形の両面で強力なツールです。コンプレッサーが「ダイナミクスの調整」に特化するのに対し、ゲートは「不要な信号の除去」と「リズムデザイン」の両立を果たす、ミックスの基本要素です。
著者について
NAO(元フリーランス ミキシング・マスタリングエンジニア)
業界経歴:1995年~2010年
セッション実績:200本以上
対応ジャンル:Pop、Rock、Hip-Hop、Jazz、Electronic Music

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