コンプレッサーの入り口編、第1回では「スレッショルド」を解説しました。
第2回は “どのくらい音を圧縮するか” を決める「レシオ(Ratio)」にフォーカスします。
こんなこと思ったことありませんか?
「どの数値に設定すれば自然なまとまりになるの?」
「強く圧縮しすぎて音が痩せるけど正解が分からない」
そんな悩みを、この記事で視覚と聴覚から一気に解決していきます。
また、MCompressorなどの視覚化に強みを持ったプラグインを使うと、
「どのくらい圧縮がかかっているか」
「どこで音が変化するか」
をリアルタイムで確かめることができます。
値を“なんとなく”動かすのではなく、
「音がどこでどう変わるのか」
「どの設定で音がまとまり、どこから不自然になるか」
といった体験・判断の基準まで、プロの視点で具体的に解説します。
プラグインをインストール
今回も視認性がピカイチの無料プラグイン、MeldaProduction社の「MCompressor」を使いながら解説していきます。
また今回は、あなたの理解が深まるように、他のメーター類を追加しています。
(無料)MeldaProduction MCompressor

(無料)WAVES VU METER

(引用元:WAVES、Melda Production)
精密な波形表示とメーターのおかげで、
「どこから圧縮が働き」
「どのくらいの割合で音が小さくなっているか」
が一目瞭然のオススメのツールです。
また、記事内で使用している
・サイン波
・スネアサンプル
・パラメータ設定
・理解度チェックシート
は、すべてメルマガで受け取れます。
読んで終わりではなく、【読む】【見る】【聴く】【試す】【結果の言語化】を繰り返すと、レベルアップのスピードが格段に上がるので、ぜひ使ってみてください。
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レシオの基本を解説
【読む】
レシオ(Ratio)は「“スレッショルドの値を超えた音”を“どれだけ圧縮するか“」を示すパラメータです。
たとえば,スレッショルドが-20dB。入力が-10dB(超過10dB)レシオ「2:1」と設定した場合、超過分を5dBに圧縮(10dB/2)。
出力レベルは-15dBになって入力より5dBの「余力(ヘッドルーム)」が生まれます。
このヘッドルームを持たせることで音に以下のニュアンスを追加することができます。
・1.5:1〜3:1:自然なまとまり。
・4:1〜6:1:積極的な音作り。
・8:1以上:しっかり抑える。
「どれがベストか?」は素材やジャンル、狙いによって変わるので、目と耳を使った実験を通して体感的に使い分けられるのが理想です。
レシオの動きを見てみる
【見る】
まずは単純なサイン波でレシオ設定による圧縮の仕組みを視覚と数値で確認します。
※注意※
・動画は無音ですが、サイン波は長く聴いていると不快でしかないので、DAWのトラック音量を最小にしてください。
それでは、サイン波を使ってレシオの動きを見ていきましょう。
In :原音の音量
Out:レシオを通過した音量
R :レシオ比率によって抑えられた音量(ゲインリダクション量)
・入力サイン波:約-6dB
・スレッショルド:-12dB
・レシオ:2:1 → 4:1→ 8:1
・ゲインリダクション:約4dB→(レシオの比率に応じて変化していきます)
約2dB(レシオ2:1≒1/2)に圧縮され、インプットの赤くなっている部分がアウトプットでは消えてるのがわかると思います。
しきい値超過量を xx dB、レシオを R:1R:1 とすると、アウト超過は x/Rx/R dB、ゲインリダクションは (1−1/R)⋅x(1−1/R)⋅x dB
※注意※
コンプレッサーのキャラクターによって数値のブレはあるので、数値の正確性によってコンプレッサーの良し悪しが決まるものではありません。
以降の 4:1、8:1でも音量の変化の仕方を確認すると理解が深まると思います。
では次の章では、実際にスネアのサンプルに差し替えてみましょう。
スネアに差替えて聴いてみる
【聴く】
今度はスネアのサンプル音源を使って、同じ設定で「レシオ値だけ」を上げてどう変わるかを耳で確かめます。
・コンプ本体(右):レシオのみを2:1~ 8:1まで調整しています。
・VUメーター(左上):聴感に近い平均レベル。
・ピークメーター(左下):瞬間的な最大音量。
・RMSメーター(中央):全体の平均のレベル。
他のパラメーターのことは一旦忘れて、圧縮率に対してどのような変化があったかについて考えてみましょう。
視覚的な気づき:
・レシオで抑えていくにつれて、ヘッドルーム(余力の幅)が狭くなっていく。
・圧縮率を上げることでヘッドルームは小さくなっていき、リミッター効果に寄って行く。
聴感的な気づき:
・レシオで抑えていくにつれて、ダイナミクスレンジが狭くなって、「音が詰っていく」。
・アタックが抑えられていくと、音の距離感が遠くなる。
変化を感じずらいときは、モニターしている音量が小さいことが殆どです。耳が痛くならないように、ゆっくり音量を上げてみましょう。
他のスネアサンプルでも試す
【試す】
同じパラメータで、手元のスネア(生音源/打ち込み)素材で試してみてください。
同じセッティングでも、素材によっては音色の変化、圧縮感、まとまり方がまったく異なることを“体験”できればOKです。
ここでの目的は「同じセッティングでレシオを動かすだけでもサンプルによって音の変化の仕方が違う」ということだけ理解できれば100点満点です。
理解度を確認する
【結果の言語化】
ここまで実践した内容を「理解度チェックシート」に1行でも良いので自分の言葉で書き出しましょう。
目的は“正解を書くこと”ではなく、あなたの耳と脳が今どこまで理解しているかを整理することです。
記録することで、体験が自分の引き出しになります。
「読む・見る・聴く・試す・言語化」を繰り返しましょう。
この専用チェックシートもメルマガ登録者限定で配布しています。言語化に困ったときはぜひ活用してください。
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次回予告
「コンプレッサーの入り口編」第3回「アタックを極める」では音の表情を作る方法を徹底解説します。
Threshold × Ratio × Attack × Release × Knee × Makeup gain
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