【音源連動】コンプレッサーの使い方⑥「メイクアップゲインを極める」

・コンプレッサー

DTM初心者の頃、コンプレッサーのスレッショルド調整で苦労した後に、次に悩むポイントは「圧縮で下がった音量をどうやって戻すか」でした。
「どこまで上げると自然なまとまりになるのか?」
「持ち上げすぎて、せっかく整ったバランスが崩れてしまう…」
――この迷いの原因は、メイクアップゲインの扱い方が曖昧なままだったからです。

MCompressorのような視覚化できるプラグインと出会ってはじめて、
「圧縮でどのぐらい音が下がったか」
「どこまでゲインを上げれば音の芯や勢いが自然に復活するか」
――を「目」と「耳」で同時に確認できるようになり、判断の精度が一気に上がりました。

本記事では、「ただ数値を動かす」から一歩進み、
「どの音場面で、どこまでゲインを持ち上げるべきか?」
「自分の楽曲で、何を聴きながらどこまで上げると違和感が出るのか?」
といった具体的な判断基準まで、現場視点で深堀りします。


今回も解説には**MeldaProduction社 MCompressor(無料)**を使います。
細やかなメーター表示や圧縮カーブのカスタムも可能で、初心者からプロにも勧められるプラグインです。
まずは下記リンクからインストールして準備してください(ほかのM系列無料プラグインも合わせてどうぞ)。
→ MeldaProduction MCompressor
※記事内のサイン波・スネアサンプル・パラメータ設定・理解度チェックシートもメルマガ登録で配布中!


メイクアップゲインは、コンプレッサーで抑えた後に下がった音量を補正し、聴感上のバランスを整えるためのパラメータです。

  • 強めに圧縮するとピークは抑えられる一方、全体の音量が控えめになります。
  • メイクアップゲインで“ちょうどよい音量感”を取り戻すのが目的です。
  • 上げ過ぎはクリッピングやバランス崩壊の元なので、数値に頼りすぎず“耳”で確認しながら微調整しましょう。

教科書的には「圧縮前と同じ音量に戻す」とされていますが、実際は音色や粒立ちなども意識しながら少し下げ目(または持ち上げ気味)がハマる場面も多いです。


サイン波でメイクアップゲインの動作実験

まずは単純なサイン波で、「圧縮→メイクアップゲイン」処理前後の波形とメーター挙動を比較します。

参考動画(例:無音推奨・耳に優しいボリュームで確認)

  • 灰色:原音音量
  • 赤:圧縮後音量(ピークが下がる)
  • 緑:メイクアップゲインで補正された音量(ゲイン上昇幅)

サイン波をDAWで一定音量に出し、MCompressorで思い切り圧縮(例えば-12dB Threshold, 5:1 Ratio)し、ゲインリダクション分だけメイクアップゲインを上げる様子をメータで観察します。


サイン波動画構成の例

  1. サイン波を流す(-6dBの一定レベルで)
  2. MCompressorを通す前後で波形を比較
  3. 圧縮後、ピークが抑えられて全体音量が下がることを可視化
  4. メイクアップゲインツマミを徐々に回し、音量が持ち上がるのをメーターと波形で表示

ポイント:

  • 数値と言葉より「目で」“音が戻る”感覚が分かる
  • 波形で差分を見せることで直感的な理解が進む

次はスネアサンプルで、圧縮→メイクアップゲインをリアルな音源で体感します。

  • 圧縮前:原音の迫力・アタック・余韻を確認
  • 圧縮後:ピークが抑えられ全体的に小さく、場合によっては「抜け」が無くなる
  • メイクアップゲインで補正:元の存在感・抜け感が自然に戻る/やりすぎるとノイジー・バランス崩壊

スネア動画構成の例

  1. スネアサンプルを流す(リズミカルに何回か鳴る短いパターン)
  2. コンプレッサー無効状態と有効状態(圧縮のみ)で交互に再生
  3. 圧縮後で音量小さく・勢いが減る点をコメント
  4. メイクアップゲインで音量を少しずつ上げながら変化を聴かせる
  5. 「どこからが不自然か」「ピーク以外の音色バランスも注視」を補足解説

ボリュームを統一しつつ、アタックや余韻を聴き比べることで、メイクアップゲインの重要性・微調整のコツが体感できます。


次は自分の持っているドラムやボーカルなど、様々な素材で「圧縮→メイクアップゲイン」の工程を繰り返してみましょう。
ゲインリダクション量とメイクアップ幅だけでなく、「違和感がないか」「バンド全体とバランスしているか」も要チェックポイントです。

  • 同じ設定でも素材によって“ちょうど良さ”は異なる
  • 上げすぎると“音圧感”と引き換えに“自然さ”や“空間”が失われる
  • 他の楽器との兼ね合いを耳で確認

ここまで学んだ実感を「理解度チェックシート」に記録しましょう。

  • どこで音が戻った感じがしたか
  • 上げ過ぎで不自然になった瞬間はどこか
  • 他のパートとのバランス・全体ミックスへの影響

答え合わせや正しさではなく、自分なりの基準を言葉にして整理することで成長のスピードが上がります。「何となく良い」から「このくらいだから良い」へ――体験の言語化が、次の現場で役立ちます。


次回は「アタック&リリース細かく極める」へ!
スレッショルド・レシオ・メイクアップゲイン・アタック・リリースまで一連の流れを網羅すれば、さらに自在なサウンドコントロールが可能に。お楽しみに!


本記事のサイン波やスネアサンプル、設定例、チェックシートはすべてメルマガ特典で配布中。
【読む】【見る】【聴く】【試す】【言語化】の反復で、確実にミックス力を伸ばしましょう。

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